地方独立行政法人りんくう総合医療センター

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消化器外科

どんな病気を扱っているの?(胃、十二指腸)

はじめに  胃癌とは、当院の胃切除実施状況

 胃癌は日本、中国、韓国をはじめとする東アジアに多い病気です。日本において、癌種別の死亡率の中で、胃癌の死亡率は男性で第2位、女では4位です(2017年)。5年生存率と言われる治癒率は約60%程度ですが、早期に見つかれば90%以上の治癒が見込めます。特に日本では、健康診断を積極的に行っています。皆さんも、職場で胃癌検診を受けられたことがあると思います。実は日本でしか行っていない検診です。症状もなく検診で見つかれば早期に発見できる可能性が高くなります。実際胃がんの患者様の中で早期胃がんの患者様の割合は60%程度です。

胃癌の初期段階では、自覚症状があまりないため早期発見のためには検診を積極的に利用する必要があります。胃癌のリスクは40代から増加し始め、50代60代70代と年齢を重ねるにしたがい増加します。当院でも胃がん検診を受け付けていますので積極的に検診を受け、胃がんと診断された場合は専門医に相談して下さい。

当院では胃がん手術症例は年々増加傾向であり、2018年では73例でした。また特に腹腔鏡手術に力を入れており、腹腔鏡手術割合は83%でした。

胃癌の診断・治療

胃癌の治療は日本胃癌学会による「胃癌治療ガイドライン」に基づいて、内視鏡やCTなどの画像検査から正確な進行度の診断を行い、それぞれの進行度に応じた治療を行います。

(1)壁深達度(深さ)

(2)転移形式

胃がんには次にあげるような転移の形式があります。

  • ① リンパ行性転移:“がん”がリンパ管に入り、リンパ節に転移する。
  • ② 血行性転移  :“がん”が血管に入り、肝臓や肺に転移する。
  • ③ 腹膜播種性転移:“がん”が胃壁を破り、お腹の中に種を播いたように広がる。
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 転移した“がん”は大きくなるに従い、臓器の働きを悪化させたり、お腹の中に水(腹水)が貯まったり、腸を狭くするなど患者さんの状態を悪化させる原因となります。

(3)治療方針

胃がんの治療は、科学的根拠(エビデンス)に基づいた治療を実践することを基本理念とし、内視鏡治療、手術、化学療法を用いた集学的治療を行っています。個々の患者さんの病状や体の状態、希望は様々ですので最終的な治療方針の決定は十分な説明を行った後、相談して決定されます。

胃癌の治療方針をきめるための病期(ステージ)は2つの分類があります。

① 臨床分類
画像診断や生検、審査腹腔鏡などの結果に基づいた分類です。治療方針を決めるときに使う分類です。

② 病理分類
手術で切除した病変を病理診断し、実際のがんの広がりを評価した最終的なステージ分類です。病理分類は臨床分類と異なる場合があります。病気の見通しを立てたり、術後補助化学療法が必要かどうかを判断します。

*術後補助化学療法
主に病理分類のステージII、IIIに行われます。手術で癌を切除できた場合でも、目に見えないようなごく小さな癌が残っていて、後に再発することがあります。こうした小さな癌による 再発を予防する目的で行われる化学療法のことを言います。手術後の患者さんの全身状態や癌の進行度を考慮しながら、内服薬あるいは点滴と組み合わせて術後6ヵ月~1年行います。

<胃癌ガイドラインに基いた胃癌治療のアルゴリズム>

胃癌治療

胃癌治療の主なものは ①手術治療 ②薬による治療 があります。
それぞれの進行度に応じて最適と思われる治療を患者様と相談し、治療していきます。近年では、①手術治療と②薬による治療 を組み合わせて行う方法が多くなされています。

①手術治療

従来からされている開腹手術と腹腔鏡手術があります。それぞれの治療の特徴があるため、進行度や治療方針によって選択します。しかし、当院では下記に示す通り腹腔鏡に力を入れており、多くの手術は腹腔鏡にて行います。

胃癌に対する腹腔鏡手術は、安全性が確認され、平成14年から保険給付の対象となっています。しかし、技術的難易度も高く施設ごとの適応は違います。当院では、内視鏡外科学会にて認定された技術認定医(胃癌)の指導の下、積極的に取り組んでいます。2018年の腹腔鏡手術割合は83%でした。

<腹腔鏡下胃切除術>
手術方法は、お腹の中(腹腔といいます)に二酸化炭素を注入し空間を保ち、トロッカーと呼ばれる径5-12㎜程度の筒状の器具を、5本程度腹腔に挿入し、そこから小さなカメラと細いマジックハンドのような鉗子と呼ばれる器具を入れて手術を行います。切離する道具としては電気メスや、超音波メスなどを使用します。また自動ホッチキスのような縫合する器械も用います。

腹腔鏡手術の利点は、傷が小さいため痛みが少なく、術後の回復が早い点です。また整容性にも優れており、術後の心理的な面でも利点があります。また近年の技術的進歩もあり、小さなカメラを通して、非常にきれいなハイビジョン画像を得られます。従来の手術では見えなかったような、血管が確認でき、細かい神経を温存することもできるようになり、より安全で精細な手術が出来ます。そのため、一般的に開腹手術と比べて出血量も少なくなります。また当院では、「単孔式腹腔鏡手術」という臍の2-3㎝の傷のみで行う、胃切除手術も取り入れています。術後はほとんど傷が残らず、手術をしたかどうかもわからない程度になります。

しかし腹腔鏡手術の欠点もあります。それは、実際に手で触ることはできず、鉗子を介して触るため、触覚が低下します。細かな操作が多くなるため、手術時間が少し長くなることがあります。また新しい治療であるため、長期的なの成績の蓄積が少ないことがあります。

<当科における取り組み>
当科では、全ての胃癌術式において腹腔鏡手術を導入しています。
幽門側胃切除術、胃部分切除術にとどまらず、胃全摘術、噴門側胃切除術においても腹腔鏡手術を導入しています。また進行胃癌においても、安全性を十分に担保できると考えられた症例には、腹腔鏡手術を行っています。また体腔内吻合を行い、創をできるだけ小さくした完全腹腔鏡手術を行っています。
手術前日に入院していただき、術後は平均9日で退院となります。

また早期胃がんに対しては、さらなる整容性や低侵襲性を追求し「単孔式腹腔鏡下胃切除術」を導入しています。臍部の2-3㎝の創のみで行う手術で、術後はほとんど傷が残らず、患者様満足度が非常に高くなっています。

<拡大手術>
また、高度進行胃癌に対しては、化学療法を併用しつつ拡大手術も行っています。手術単独では治癒が困難な症例に対しては、化学療法を併用し、場合によっては大動脈周囲リンパ節郭清、膵体尾部合併切除、肝部分切除などの拡大手術を行い、根治を目指した治療戦略をとっています。

②薬による治療(化学療法、抗がん剤、免疫チェックポイント阻害薬)

化学療法、抗がん剤治療ともいわれ、近年新しい薬のエビデンスが出てきています。分子標的薬や、免疫チェックポイント阻害薬など新しい機序の薬も保険適応となりました。「胃癌治療ガイドライン」による、最新の治療を提供させていただきます。また、近年は手術成績を向上させるために、手術と薬による治療を組み合わせる方法も行っています。

胃粘膜下腫瘍 -GISTなど

胃粘膜下腫瘍に対しては、機能温存手術である、胃部分切除術を行っています。極力胃の切除範囲を小さくして機能を温存しています。腹腔鏡下で手術を行うことにより、胃の切除範囲のみならず、体の創に関しても極力小さくしています。

また腹腔鏡のみでは困難な症例に関しては、消化器内科Drによる内視鏡と共同して行う、腹腔鏡内視鏡合同手術(LECS)を取り入れています。また単孔式腹腔鏡手術を行うことでさらなる低侵襲、整容性の向上も得られています。

 

食道癌治療

食道がんとは

食道がんは、食道の内側にある粘膜の上皮から発生します。 食道がんの罹患率は60~70歳台に好発し、女性よりも男性で約5倍多くなっています。

食道がん発生の危険因子としては、日本人に多い扁平上皮がんでは喫煙と飲酒が相乗的に作用してリスクが高くなることが知られています。欧米に多い腺がんでは、肥満や逆流性食道炎でリスクが高くなるとされています。日本でも生活習慣などの欧米化により、今後は腺がんの増加が予想されます。

食道がんの初期に見られる症状としては、食べ物を飲み込んだときに胸の奥がチクチク痛む、熱いものを飲み込んだときにしみるといった症状が挙げられます。しかし、初期には目立った症状がないことも多く、検診や人間ドックのときに発見されることが20%近くあります。がんが進行するにつれて、食道で食べ物がつかえる、体重が減少する、胸や背中が痛む、むせるような咳や血痰がでる、声がかすれるなどの自覚症状が現れてきます。

診断と治療

食道がんの診断には、食道造影検査(バリウム)、上部消化管内視鏡検査、CT検査、PET-CT検査などの検査を行います。食道がんの進行度(ステージ)を決定して、進行度に基づいた治療方法を決定します。

食道がんの病期とガイドラインで推奨される治療法の関係を図に示します。

食道がんの治療は、内視鏡治療、手術治療、放射線治療、化学療法の4つがあり、患者さんの希望や年齢、合併症、病気の特性などを考慮しながら、治療法を決定します。

科治療(手術)

食道癌におけるリンパ節転移は胸腔内のみならず、頚部から腹部の比較的広い範囲にわたって認められるのが特徴です。従って、頚部から腹部に至る比較的広範なリンパ節の除去を行う必要があります。

①従来法では、手術創が胸部と腹部に大きく切開するため、術後の疼痛などの負担が大きく、当院では、主に②胸腔鏡下手術を行っています。従来法に比べて、創部が小さく、痛みや肺への負担が少なく、術後の回復も早くなります。

  • ①従来法

手術は以下のように行います。右第4肋間より胸腔内に入り、腫瘍のある胸部食道とその周囲のリンパ節を一塊にして切除します。つぎに胸骨下縁から臍に至る腹部の正中で切開し、胃の小弯側とその周囲のリンパ節を切除します。また頸部にも横切開をおき、転移を起こしうる可能性のあるリンパ節を除去します。再建法は、胃を細長く形成して食道の代わりとし、(胸腔内、胸骨後経路、皮下経路)を通して頚部の所で残っている食道と吻合します。何らかの理由で胃を持ち上げて再建することができない時には大腸や小腸を頚部まで持ち上げます。

  • ②胸腔鏡下手術 (鏡視下手術)

胸腔鏡下手術はまず、右胸部に直径1cmの穴を開けてテレビカメラを挿入し、胸のなか(胸腔内)をモニターに映します。このモニター画面を見ながら、さらに直径1cm程度の穴を数か所(3~6か所)あけ、その穴から手術器具を挿入して、従来法と同じことを行います。腹腔鏡下手術はお腹に6cmの小切開を加え、ここに術者の左手だけをお腹のなか(腹腔内)に挿入し、モニターをみながら手術を行います。この手術は術後痛みが少なく、回復も早くなります。しかし、肺の癒着が存在する場合や、腫瘍が大きくて切除が困難な場合、出血した場合は、従来の開胸手術や開腹手術に変更する場合もあります。手術は安全、確実に行うことが重要だからです。

化学療法

食道癌においても、近年新しい薬のエビデンスが出てきています。免疫チェックポイント阻害薬も保険適応となりました。「食道癌治療ガイドライン」による、最新の治療を提供させていただきます。また、食道がんでは、がんや全身の状態により、薬を単独または複数組み合わせて用います。放射線や手術と組み合わせる場合には、状況に合わせて同時に行ったり、順番に行ったりします。

放射線療法

食道癌に対する放射線治療には、がんを治す根治的放射線治療と、がんによる症状を緩和する姑息的放射線治療があります。放射線治療は局所に限局した治療であり、広範なリンパ節領域すべてに照射が可能なわけでもありません。化学療法と放射線療法を組み合わせ腫瘍の完全消失を期待します。

治療は放射線照射を週5日(平日)、5週または6週間連続して行います。

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