地方独立行政法人りんくう総合医療センター

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口腔外科

当科の診察

Ⅰ 頭頸部癌治療

1.超選択的動注化学療法

当科が非常に力をいれている治療方法で、切除や放射線治療を行わずに、癌を根治出来る方法である。当科ではカテーテルを完全に皮下留置し、2本または3本のカテーテルを留置出来るテクニックを持っており、後に述べる外来通院で癌を治す(=根治する)ことができる。

2.外来動注化学療法

週に2回程度の通院が可能な方では、1ヶ月程度の通院で、動注による根治が可能な場合がある。腫瘍の状態や、患者さんの病状や家庭環境などによります。仕事をつづけながらの根治的癌治療が可能な、壮年期の方には有用な治療方法です。

3.3D模型を用いた顎骨再建

顎骨の形態と位置は顎切除後に再現されなくてはいけない。当科では3D模型を使って、模型上で手術を行い、再建プレートと採取骨の大きさ形状をほぼ完全に再現している。

4.丁寧な皮膚縫合

目に見える傷は、癌の術後といえども、痕が残らないように、丁寧に復位/縫合している。男女、年齢には関係なく、美しい仕上がりをこころがけている。唇顎口蓋裂の乳幼児の皮膚を長年扱ってきた当科では、高度な外句顔面形成外科のテクニックを培ってきた。

5.あきらめない頭頸部癌治療

先に述べたように、当科は非常に多くの治療の引き出しをもっている。したがって、他施設で治療を断念された患者さんが多く当科を訪ねていらっしゃいます。また多くの講演を通じて、他府県・他施設からの紹介も多くあります。

 

Ⅱ 唇顎口蓋裂

1.唇顎口蓋裂の一貫治療

唇顎口蓋裂の治療は出生直後、場合によっては出生前からはじまります。
大阪大学口腔外科は、日本有数の唇顎口蓋裂治療センターをもち、かつては西日本のほとんどの症例をあつめるほどのものでした。現在は唇顎口蓋裂センターをもち、そのDNAは当院口腔外科にも受け継がれています。成人まで色々な治療スケジュールがあり、それをすべてマネージメントをできる施設・科は創多くありません。南大阪では、府立母子保健総合医療センターと当科が一貫治療をおこなうことができます。

2.哺乳床(Hotz床)、NAMプレート

3.口唇形成術、口蓋形成術

口唇形成術は、早すぎると患児の体力・組織が小さすぎるなどの問題があり、遅すぎると裂が広くなってしまったり、親御さんの希望に添わなくなってしまいます。現在は3〜5ヶ月で行うことが多くなっています。当科ではクローニン法という方法で手術を行いますが、長年経験を積まないと解らないメスの方向や縫合の力具合などがあり、一朝一夕で秀得できるものではありません。
口蓋裂は、言葉を多く習得する2歳までに軟口蓋といわれる『のどちんこ』の閉鎖と後方移動が必要となります。以前は1歳6ヶ月ごろプッシュバック法という手術を行っていましたが、顎発育等の観点から、現在は1.2歳ごろに軟口蓋だけのファーロー法という手術を行っています。是法部は時期をみて閉鎖術をおこないます。

4.顎裂閉鎖術、口唇・鼻翼修正術

鼻の形態は、軟骨の欠損があり、どうしても平べったい鼻になります。色々な工夫で形態を改善します。また口唇の修正も適宜おこなうことがあります。
多くの場合、前から2番目の葉が欠損または発育不全をおこしています。矯正治療をほぼ100%の方が行いますが、その際歯槽部(葉が埋まっている骨)に欠損(顎裂)があると、矯正でも歯を移動することができません。必要に応じて、骨移植(腸骨や人工骨)を行います。

5.顎骨骨切り術

後述します。唇顎口蓋裂では中顔面(上顎)の発育不全となることがあります。その場合相対的に下顎前突(俗に言う『しゃくれ顎』)になることがあり、コレを治す方法が顎骨骨切術となります。

 

Ⅲ 顎顔面外傷

1.下顎骨骨折、上顎骨折

咬合にかかわる非常に大事な治療となります。かならずしも手術前に綺麗に噛み合っていたとは限らないので、整復(折れた骨をもとに戻す)は非常に重要な作業となります。咬合の理論を熟知している口腔外科医の目が必要となります。

2.頬骨骨折、眼窩底骨折

頬骨も外傷で骨折しやすい部位です。手術痕ののこりにくい方法で手術をおこないます。
眼窩底骨折も暴力などの外傷でよくみられる外傷ですが、手術不要なことも多々あり、その見極めをします。手術創は、見えない部位での切開や目立ち難い切開で、ほぼ手術による醜形はありません。

3.顔面多発骨折

当センターは救命救急センターを擁しており、顔面多発骨折症例は機能形態改善が急務とされます。全ての顎顔面骨折に対応できます。

 

Ⅳ 顎変形症

1.下顎骨切り術

矯正歯科には『歯科矯正』『外科矯正』があります。前者は皆さんご存知の通り歯に針金をつけて歯をうごかして歯並びを京市絵する方法です。舌側矯正や床矯正といったバリエーションもありますが、当科では矯正治療は行っておりません。
外科矯正は、歯を動かすだけでは充分な満足が得られないと判断されたときに、矯正歯科から当科に顎骨の骨切りの依頼がなされます。術前矯正(1〜2年)ののち、顎骨を切って骨を移動して形態を変えます。矯正歯科との綿密な計画策定が必要となります。

2.上顎骨切り術

上顎の位置や形態を変える方法です。上顎を単独で手術することは少なく、多くは上下同時に手術をおこなうことが多いです。

3.オトガイ形成術

下顎の先だけ骨切して形態を整える方法です。おおくは下顎骨骨切りの術後、形態的に不十分と患者さんが訴えられたとき、抜釘時におこないます。

 

Ⅴ 舌痛症・非定型顔面痛

これは患者さんが訴えても、なかなか解ってもらえず、長年悶々とされているケースが多いです。いくつかの病態があり、それに応じた治療を行います。鎮痛剤の使用はほとんどのケースで不要です。症状がなくなるまで1,2ヶ月を要しますが、その間は2週間毎程度の通院が必要となります。
遠方からの紹介も多くありますが、症状が安定すれば3ヶ月〜6ヶ月毎程度の最新で良いのですが、それまでは、2週間程度での通院が必要です。

Ⅵ 智歯抜歯(親知らず抜歯)

当科では、よほどのことが無い限り外来局所麻酔で抜歯いたします。深く埋まって居る場合でも、さほどの問題なく抜歯できます。毎日3本〜10本程度/年間1000本程度の智歯抜歯をおこなっておりますが、最大の特徴は、抜歯手術の予約をとることができるということです。
医療機関からの『即日抜歯』の予約が必要となりますが、これにより、予約していただいた日に初診、手術説明、了解いただければ即日智歯抜歯し、あとはかかりつけ歯科での経過観察をお願いすることができます。したがって、学校や勤め先を休むのは最小限で澄みます。

 下顎智歯(下アゴの親知らず)抜歯についての説明

親知らず(智歯)の扱いについては諸々の意見があり、皆さんも情報の交錯で迷われることも多々あるかとおもいます。他の病気とおなじように、誰にも当てはまる一般論というものはなく、専門医の診察を受けて、そのうえで医師の意見を聞き、最終的にはご自身で判断するのがよいかと考えます。したがって、質問の『メリット・デメリット』という観点はとてもよい着眼点と考えます。きっと良い結論を見いだされるかとおもいます。
私がよく患者さんに説明する概要を【智歯抜歯心得】として書いてみます。あくまで私の考えですので、診察をうけられた先生の説明とは食い違う点もあるかと思います。その場合は、やはり診ていただいた先生の説明をよく聞いて下さい。

智歯抜歯心得

<抜くか?抜かないか?は患者さんの価値観による>

まず『智歯は何が何でも抜く』という考えは捨てて下さい。これから申し上げることや、先生の意見を聞いて、自分の価値観で結論を出して下さい。

<智歯を抜く理由>(メリット)

智歯は他の歯のようにまともに生えていないことが多いので、数々の問題を抱えることがあります。以下の状況であれば、抜くことが望ましいことがあります。

  1. 智歯が歯肉に一部埋まっていると、歯肉との隙間にばい菌が繁殖して、歯肉の炎症を起こす。
  2. 智歯と前の歯の間は構造的に掃除しにくい場所なので、食渣が溜まって智歯のみならずその前の歯もむし歯になる。
  3. むし歯になってしまった場合、完全な治療が困難であり、むし歯が再発する可能性を考えると、かみ合わせに関与しない智歯ならば抜歯する方が安全。
    前の歯のむし歯の治療のためには、隣接する智歯が邪魔になったり、せっかくむし歯の治療をしても、(2)の理由でまたむし歯になる可能性がある。
  4. 妊娠中は炎症を起こし易いので、(1)の症状が出やすい。しかし妊娠中は薬内服などの制限があり、十分な治療が望めない可能性がある。従って、妊娠の前に抜いておく。
  5. 矯正治療のうえで、抜歯が必要なことがある。

<抜歯に当たって>(デメリット)

  1. 原則として局所麻酔で抜歯します。伝達麻酔という下顎全体に効く麻酔方法を併用することが多いので、抜歯中は、『押す引く響く』などの感覚は残りますが、痛くはありません。ただし、麻酔は3・4時間で切れてきますから、その後は痛みが出ます。鎮痛剤を上手に使えば、十分乗り切れます。
  2. 骨や歯を削って抜きます。その場合、普通の抜歯と異なり、頬が腫れたり、口が開き難くなったり、喉が痛くなったりします。腫れの程度によっては、2,3日で皮膚側に内出血斑(青タン)ができることもありますが、1・2週間で黄色く変色し、それも消えて行きます。抜いた辺りの骨が触ると『たんこぶ』のように硬く腫れることがありますが、通常数週〜数ヶ月で触れなくなります。
  3. 下歯槽神経という神経が、下顎骨の中で、智歯の根の先付近を通過します。抜歯の時にこの神経を傷つけると、同側の下唇や歯肉に感覚異常(知覚低下や知覚喪失)を生じることがあります。半日経ても唇の感覚が麻痺していたりすると、それは神経損傷によるものです。抜歯後数時で麻酔が切れてきて、唇の感覚が戻った場合は、それから麻痺が進行することはありません。神経損傷の程度により、数日〜数週〜数ヶ月さらに1年かけて治癒していきますが、時に一生残ることがあります。麻痺が出たら、薬物療法、神経ブロック、電気治療などの理学療法を行うことで改善を促すことがあります。先生に相談して下さい。唇を動かす運動神経(顔面神経)は全く別ですから、唇の形や運動には支障ありません。
  4. 稀ですが舌の感覚麻痺、骨折(ノミを使う場合など)、歯の一部が組織内に迷入(CTなど撮って意外に大変な処置になるかもしれません)、皮下気腫(組織内に空気が入り込み、急激な腫れと痛みが生じる、1週間程度で治癒します)など

<抜歯後経過>  —抜歯した日を1日目として—

1日目) 腫れはさほどではない、痛みは様々、通常冷やします(冷罨)。抜歯後2時間で飲食可能ですが、唇と舌がしびれているようであれば、間違って噛んだり熱傷に気をつけて下さい。
2日目) 喉の痛みや開口障害が出現する可能性があります。歯磨きは、翌日以降は、痛みの我慢出来る範囲で抜歯した周囲を含めてしていただいて結構です。
3日目) 腫れがピークに達する(抜歯から丸1日半程度)。腫れは軽減傾向に転じるので、以降は冷罨禁止。
4・5日目) 抜歯した付近の歯肉が白くなる、抜歯した穴の中に白いものが詰まる。いずれも、正常な傷口の経過のことが多いです。
7日目) 抜糸、腫れはほとんど判らないことが多いが、まだ残っていることもある。
14日目) ものが当たっても痛くなくなる。抜いた側で噛めるようになる。

<抜歯後の留意点>   —以上のことから—

◎抜歯直後〜2日目 しっかり冷やす。これは先生により指導が違います。先生の指導に従って下さい。私は《骨を削った場合》(冷罨法)氷でしっかり冷やします。湿布や冷却シートは効果はほとんどない。飲酒、運動、入浴は禁止(軽くシャワー洗髪は可能)《骨を削らなかった場合》冷罨法は不要です。
◎2日目以降は運動しても良いですが、跳んだり跳ねたりすると傷口に響きます。
◎大事なイベント、仕事、会議などの前1・2週間程度は、智歯抜歯は避けた方が良いと思います。

<異常経過>

[抜歯後出血]翌日くらいまでは、唾に血がにじみます。その程度なら大丈夫ですが、歯が血に染まるとか、抜歯したところに盛り上がるような血の塊ができているような場合は異常出血の可能性があるので、できれば抜歯した医療機関に相談して下さい。
出血が気になるようなら、ガーゼやタオルの切れ端を指の先くらいの大きさに丸めて、抜いたところの歯茎で噛んで居て下さい。ティッシュでの圧迫は避けて下さい。
[治癒遅延]通常1週間以内に鎮痛剤が必要なくなりますが、治癒が遅れたり、抜歯の状況によっては、なおも鎮痛剤が必要なこともあります。鎮痛剤は胃薬を併用しながら疼痛をコントロールして下さい。
[ドライソケット]抜歯後2・3日で痛みが強くなってきて、1週間経っても、鎮痛剤を4時間毎に服用しなければならないほどの痛みが続き、口臭が酷い場合は、ドライソケットという治癒不全の可能性があります。必ず医療機関で相談していただき、自分で鎮痛剤だけで乗り切ることは考えないで下さい。医療機関により対処方法が違いますが、必ず良くなりますが、3週間程度は痛みが強いことが多い。

<長期経過>

抜歯した後の穴は、血の塊→肉で埋まっていくという『2次治癒』という形をとることが普通です。この場合、抜歯した穴には必ずばい菌が繁殖します。それが、食渣などを分解して腐ったような妙な味のものとして感じられることが多く、智歯の場合、3.4日から始まり数週間以上続くこともあります。しっかり口を濯ぐことが必要です。さらに、智歯の前の歯との間を1年以上しっかり磨いて下さい。怠ると、数週〜数ヶ月して、化膿してくることがあります。化膿すると、痛み・腫れ・白い膿が出てくることがあり、抜歯した施設で診てもらって下さい。

診てもらった先生の話をよーく聞いて、この【親知らず抜歯心得】を参考に、納得できる結論をだしていただき、また抜歯後の不安を乗り切って下さい。

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