臨床工学
基本情報
臨床工学技士とは
「臨床工学技士」とは、1988年に施行された臨床工学技士法に基づき、厚生労働大臣の免許を受けて医師の指示のもとに業務を行う医療専門職です。主に、心臓手術中の人工心肺や心臓補助装置、人工呼吸器、人工透析装置を含む血液浄化装置などの「生命維持管理装置」の操作および保守管理を担っています。2021年の法改正により、従来の生命維持管理装置の操作に加え、これらの装置を用いた治療に関連する医療用装置(生命維持管理装置を除く)の操作も業務範囲に含まれるようになりました。これにより、臨床工学技士の役割は時代のニーズに応じて拡大し続けています。当センターにおいても、臨床工学技士はタスクシフト/シェアの推進に積極的に取り組んでおり、医療チームの一員として多職種連携の中核を担っています。
業務内容
人工心肺関連
予定された心臓血管外科手術に加え、夜間・休日を問わず緊急手術にも対応しています。心臓と肺の機能を代行する人工心肺装置の操作・管理をはじめ、心筋保護液供給装置、経皮的心肺補助装置(ECMO)、大動脈内バルーンパンピング装置(IABP)、自己血回収装置など、幅広い医療機器を取り扱っています。また、人工心肺装置を使用しない冠動脈バイパス術や、大動脈ステントグラフト挿入術などの治療においても、臨床工学技士が医師と連携しながら業務に関わっています。さらに、MICS(低侵襲心臓手術)においては、術中のスコープ保持も臨床工学技士が担当し、手術の安全かつ円滑な進行を支援しています。当センターでは、学会認定資格である体外循環技術認定士を取得した臨床工学技士が人工心肺関連業務を担当しており、高度な専門性と技術力をもって、心臓血管外科領域におけるチーム医療の一翼を担っています。

心臓血管造影関連
心臓カテーテル検査や血管内治療において、患者監視装置、造影剤自動注入器、血管内診断装置(IVUS・OCT)などの操作・管理を臨床工学技士が担当しています。さらに、ECMOやIABPなどの補助循環装置、除細動器などの緊急時に使用される医療機器にも対応しており、検査・治療の安全性と円滑な進行を支えています。臨床工学技士は医師の指示のもと、術中の機器操作や治療支援を行うことで、より深く診療に関与しています。また、データベースへの入力やデータ整理、計測業務、物品管理なども担い、循環器医師、放射線部看護師、診療放射線技師と連携しながら、チーム医療の質向上に努めています。なお、当センターでは、学会認定資格である心血管インターベンション技師(ITE)を取得した臨床工学技士が心臓血管造影関連業務を担当しており、専門性の高い技術提供を行っています。

ロボット支援下手術関連
2023年度、ロボット支援下手術の保険適応拡大に伴い、当センターにも「daVinci(ダビンチ)システム」が導入されました。これにより、より精密で低侵襲な手術を提供できる体制が整い、患者様のQOL(Quality of Life:生活の質)向上に大きく寄与しています。daVinciシステムは高性能なロボットアームや3Dビジョンシステムなど、精密かつ複雑な医療機器で構成されており、その安定稼働には高度な専門知識と技術が求められます。ロボット支援下手術では、機器の信頼性と即応性が手術の安全性に直結するため技術と知識の研鑽を重ねながら、患者様にとってより安全で質の高い医療の提供に貢献しています。

血液浄化関連
急性期対応型病院として、透析治療の導入や維持透析患者様の検査・手術への対応を行っています。血液浄化センターでの透析業務に加え、集中治療室ではより重症な患者様に対する血液浄化も実施しており、通常の透析療法に加えて、持続的腎代替療法(CRRT)、血漿交換療法、LDL吸着療法、腹水濾過濃縮再静注法など、あらゆる血液浄化法に夜間・休日を問わず対応しています。透析記録は透析管理システムを用いて行い、透析液供給装置や水処理装置の操作・管理、データベースの運用なども臨床工学技士が担っています。また、特にシャント関連業務に力を入れており、シャントPTA(経皮的血管形成術)への対応、シャントマップの作成、エコーガイド下での穿刺などを通じて、透析治療の安全性と効率性の向上に努めています。当センターでは、透析技術認定士や血液浄化関連専門臨床工学技士、認定血液浄化臨床工学技士が血液浄化関連業務に従事しており、高度な専門性と技術力をもって、患者様に安心・安全な医療を提供しています。

呼吸療法関連
呼吸ケアサポートチーム(RST)の一員として人工呼吸器の導入期から離脱までの機器設定や監視に携わっています。重症の患者様に対しては夜間休日を問わず人工呼吸器の設定に対応しています。また、睡眠時無呼吸症候群に対する終夜睡眠ポリグラフィー検査(PSG)や簡易型睡眠ポリグラフ検査(PM)を実施しています。適応換気補助装置治療(ASV)や持続気道陽圧装置治療(CPAP)の導入や外来診療での患者指導や管理に関わっています。
人工呼吸器を安全に使用するために、集中治療室から新生児・小児病棟、一般病棟まで使用中点検や日常点検および定期点検を行っています。当センターでは学会認定である3学会合同呼吸療法認定士・認定集中治療関連臨床工学技士・呼吸治療専門臨床工学技士が呼吸療法関連業務を行っています。

不整脈治療関連
ペースメーカやICD(植込み型除細動器)、CRT(心臓再同期療法)デバイス、植込み型ループ心電計などの留置手術に立ち会い、プログラマの操作、設定、患者様への説明などを行っており、定期外来では患者様に植込まれた機器のチェックや設定変更などのフォローアップ業務を行っています。また、遠隔ホームモニタリングシステムによる心臓植込みデバイスのデータチェックなども行っています。心筋焼灼術(アブレーション)においても、電気生理検査(EPS)やアブレーション装置の操作・管理を通じて、心房細動や心室頻拍などの不整脈治療を技術面から支援しています。術中の安全確保と治療の精度向上に寄与し、医師の診療をサポートしています。当科にはCDR(PM/ICD関連情報担当者)認定・不整脈治療専門臨床工学技士認定を取得した臨床工学技士が在籍しており、埋め込み機器に関する専門的なアドバイスを医師に提供し、また業者と医師との連携に加わることでより良い不整脈治療を心がけています。

医療機器管理関連
検査機器のほかにも大小様々な治療用医療機器を所有しています。その数は4千数百点を超え、各部門での安全な使用を目標に保守安全管理や機器の取り扱い説明会・講習会を企画、開催しています。各部門からの修理・点検依頼があり、これらの対応に加えて医療機器の中央管理を行うことにより機器運用の効率化も図っています。学会認定である臨床ME専門認定士・認定医療機器管理関連臨床工学技士が在籍しています。

救命救急センター関連
2013年4月より三次救急医療施設である泉州救命救急センターが移管され、臨床工学技士は救命救急センターにおける関連業務も行っています。救急症例に対する体外循環式心肺蘇生法(ECPR)や血液浄化業務などに加え、集中治療における医療機器の操作、管理、保守点検に関わっています。また、救命救急センターは災害拠点施設としての役割があり、実災害による活動に備えて様々な災害を想定した訓練と研修への参加を行っています。救命救急センターでは緊急症例への迅速な対応を求められることが多く、臨床工学技士は夜間・休日を含め交替勤務体制で救命救急医療に対応しています。また、災害拠点病院として救命救急センターは実災害に向けた災害時医療活動(災害派遣医療チーム:DMATを含む)を中心的に担っており、様々な災害を想定した訓練と研修の実施に積極的に参画しています。臨床技術部門にはDMAT隊員が在籍し、東日本大震災をはじめ、熊本地震や豪雨災害などの実災害においてDMAT派遣を含む災害時医療活動を行っています。

教育研修施設関連
りんくう総合医療センターでは、地域の医療専門職が集い、学び合える場として、病院隣地に「りんくう教育研修棟」を設置しています。研修棟では、シミュレーション機器を活用した多様な教育プログラムを開発・実施しており、医療現場に即した実践的な研修会を定期的に開催しています。臨床工学技士はその専門性を生かし、教育研修プログラムの企画・運営に積極的に関わっており、医療安全や技術習得を目的とした研修支援を行っています。また、自己研鑽を目的とした学習会や学術的研究の場としても研修施設を活用し、知識と技術の向上に努めています。さらに、2025年度からは研修棟に設置されているシミュレーション機器の管理業務を臨床工学科が担っており、機器の保守・運用を通じて、教育環境の質的向上にも貢献しています。

学生実習指導・見学
臨床工学技士養成校の学生実習を広く受け入れており、高気圧酸素業務を除く、すべての臨床工学技士業務に関する臨床実習が可能です。各業務の指導にあたるスタッフは、学会認定の認定士・専門士資格を取得しており、専門性を活かした実践的な指導を行っています。臨床工学技士養成所指定規則の改正により、臨床実習を受け入れる医療施設には、厚生労働省の指針に基づいた「臨床実習指導者講習会」を修了した指導者の在籍が要件となりました。これを受け、2023年より日本臨床工学技士会主催の「臨床工学技士 臨床実習指導者講習会」が開催されており、当センターには同講習会を修了した指導者が在籍しています。施設見学や関連業務の見学についても、随時受け入れており、教育機関との連携を通じて、次世代の臨床工学技士育成に貢献しています。
【過去の臨床実習生指導実績】
大阪ハイテクノロジー専門学校
日本メディカル福祉専門学校
大阪医専
近畿大学
藍野大学
森ノ宮医療大学
大阪電気通信大学
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